大地・かたち・共同体–『未来のコミューン 家・家族・共存のかたち』が2020年度日本建築学会著作賞を受賞しました。


自分のブログでの報告を忘れていました。『未来のコミューン』が2020年度日本建築学会著作賞を受賞しました。日本建築学会著作賞は、「会員が執筆した建築にかかわる著書であって、学術・技術・芸術などの進歩発展あるいは建築文化の社会への普及啓発に寄与した優れた業績」に対して贈られるものとなっています。

学会による査読評→ https://aij.or.jp/images/prize/2020/pdf/4_award_005.pdf…

業績紹介→ https://aij.or.jp/jpn/design/2020/data/4_award_005.pdf

大地なければ建築なく、人いなければ建築の意味はありません。2011年の東日本大震災の発生は、私がよってたつ学問体系を根底的に問い直す機会になりました。

今の私にとって建築とは、人間や社会や環境に対し大きな影響と力を及ぼす、かけがえのない具体=有形であると思い至りました。

今回受賞した『未来のコミューン』では、かたち、そしてデザインには、社会もしくは共同体を生み出す力が存在していることを近代住居に内在する諸問題を渉猟しながら、その未来をも探偵小説のように一つ一つ明らかにしていきました。

これらはかたちによる共同体形成論とその吟味批判です。2018年度に同賞を受賞した『動く大地、住まいのかたち』では、地球活動と人間の構築活動との間に密接な関係があることをプレート境界にそった世界調査旅行を通してお伝えすることができました。これは建築のかたちを生み出す下部構造としての地球活動を初めて体系的に論じました。これら作業によって人間やその社会の持続には、具体的なかたちによる解決が必要であることを強調しました。

さらにこの二書に、1960年代に発表されたアメリカの美学者・考古学者であったG.クブラーの『時のかたち』鹿島出版会の共訳作業の出版(2018)を加えることで、私なりに、建築の有形の意義をささえる「かたち三部作」としました。以下の構造です。

大地・かたち・共同体

『動く大地、住まいのかたち』・『時のかたち』1・『未来のコミューン』

1)この翻訳が動機となって『セヴェラルネス+』を書きました。自分流クブラー読みです。

これらの作業によって東日本大震災後の、建築の居場所をみつけるための私なりの作業の一応の回答としたいと思います。そしてこの度の受賞をいただいたことを励みに、新しい空間的諸問題が山積みの新しい歴史上のフィールドにおもむいてみたいと思います。今回の審査に当たりご精読いただきました審査委員を始め、日本建築学会に心よりお礼を申し上げます。

インスクリプト刊、定価:本体3,200円+税
四六判上製 320頁
ISBN978-4-900997-73-8
装幀:間村俊一
装画:大鹿智子

rhenin について

中谷礼仁(なかたに のりひと)歴史工学、アーキオロジスト。早稲田大学建築史研究室所属、教授、千年村プロジェクト、日本生活学会、日本建築学会など。著書に『動く大地、住まいのかたち』、『セヴェラルネス+』など。
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