『動く大地、住まいのかたち プレート境界を旅する』が2018年日本建築学会著作賞をいただきました。


『動く大地、住まいのかたち プレート境界を旅する』(岩波書店2017)が2018年日本建築学会著作賞をいただきました。公式発表ページはこちらです。

受賞は、自分の苦労や喜びの内実が他者にも通じるものであったことが確認できるのでとても嬉しいことです。どなたかを存じ上げることはできませんが、今回の選評にとても励まされました。

これまでの比較建築史が、国家の枠組みや情報量に左右され、対象の選択が恣意的になりがちであるのに対し、本書ではプレート境界という地学事象を方法上の根拠にしており、社会的な恣意性が排除された斬新な切り口が提示されている。そもそもプレート境界に沿ってユーラシア大陸を横断するという試みを実践した建築学者は皆無であろう。言語も文化も気候も多様なこの地域を横断するという発想自体が驚異的だが、筆者は躊躇なく出かけ、余所者の入り込まない奥へと踏み込んでいく。生活に深く分け入るその体験に裏打ちされた叙述は、新鮮な発見に溢れた優れた比較文明論ともなっている。

本書は地球の地殻を構成しているプレート境界に特有な環境形成とそこでの建築文明や住文化との密接な関係を、現地訪問と文献調査を併せて報告した建築論的旅の記録です。

執筆の発端は東日本大震災発生一ヶ月後の被災地訪問からでした。土地が沈んだ現場に立ち尽くし、日本以外のプレート境界地域でも同じようなことが起こっているのだろうかと、ふと考えたことから始まりました。
その後様々な種類の地図を買い集め、日本も属するユーラシアプレートの境界が、東南アジア、インド、イスラム、地中海、アフリカの諸地域を横断しジブラルタル海峡にまで達していることを確認しました。にわか勉強を始め、古代文明の多くがプレート境界付近で発生していることにも気づき、破壊のみならず地殻活動の創造的側面を意識し始めました。プレートテクトニクスが新たな建築的意味を持って現れてきました。準備期間中に教えを乞いにいくと、無謀な計画を心配して同行してくれた先行研究者が複数登場しました。現地での会話は新たな発見に欠かせぬものとなりました。たくさんの記録をとりました。このブログにも途中、現地から送った記録などが残っています。

本書は、当方の思いつきをきちんとした活動に育ててくれたたくさんの人々や関係機関による、とうとい協力の賜物です。本書のあとがきにも書きましたが今でも思い出すのは、土地土地の激しい風景を一緒に経験したそんな人々の姿や声です。
そしてそもそも地球自体が人間に建築活動をうながした、大いなる建築活動であったことを身を以て知ることとなりました。

2-0-7. ヤズド(Yazd)周辺で撮影した山の景色。二つの山の円弧が繋がったカーブを構成している。.jpg

この活動の記録がこれからも特に若い人々に受け容れられ、読み続けられることを強く願っています。

以下に同学会からの求めに応じて作成した概要を置いておきます(途中現地動画あり)。

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「トマソンとまちを歩こう!」3学期第1回べてぶくろカレッジ2018年3月31日(土)開催!


街にひそむ無用の事物(=芸術の位相)を暴き出してしまった「トマソン観測センター」(創立約35周年!)が、精神障害や生きづらさを抱えた当事者の活動拠点・「べてぶくろ」主宰の講座にワークショップ講師として参加します。事物と人間内部の無意識を探索、共に生きる両組織がジョイントした歴史的快挙です。

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文京狭小純粋階段  撮影:鈴木剛

昨年べてぶくろより「何かまち歩きの…」と講座を依頼された時、瞬時にしてトマソン観測センターの方々の顔が浮かびました。打ち合わせを続け、本日だいたいこれでいいのではないかというタイムテーブルを組み上げました。

実施当日は、トマソン観測センター、中谷礼仁研究室、トマソン的視点を身につけたべてぶくろスタッフが参加者の方と街に出てトマソン物件の発見、そして設営会場にて品評会やディスカッションを行います。発見があるように無理せずゆっくりと時間を組む予定です。生きづらさを抱えた人もトマソンやべてぶくろ(浦河べてるの家)に興味を持っていたプロフェッショナル、芸術家の方もぜひご参加ください。

基本情報はリンク先をご確認の上、フォームにて申し込みください。30から40名ほどの催行人数にする予定です。http://www.bethelbukuro.jp/?p=1220

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真剣に当日プログラムを検討する講師の顔ぶれ(左より向谷地愛(べてぶくろ)、煙突に乗られたあの飯村昭彦(トマソン観測センター)、中谷、鈴木剛(同観測センター現会長)

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三者合意に達した時の記念写真です(撮影はべてぶくろ)。有料で人数に限りがあります。1日を使った長いセッションです。もうないだろう今回の企画、ご参加の上、是非みなさんで深い理解に達したいと思います。

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シンポジウム「野良道具/フィールド・デバイス 世界をつくる」 2018年3月10日(土)13:00-17:30


日本民具学会・道具学会・日本生活学会は合同シンポジウムをおこなっています。
今回は少し興味深いタイトルになりました。趣旨説明、登壇者、日時の詳細は以下をご覧ください。事前予約不要、入場無料、会員以外の方も参加可能です。20190310sympo2.jpg

●テーマ趣旨

野良道具/フィールド・デバイスは二つの意味を持つ。
「野良道具」という日本語は、大地に根ざした日常生活を具体化するための道具に聞こえる。
「フィールド・デバイス」と表現すると、それは野外における観察や計測に用いる器具のような意味が強くなる。いわば事物の客観化のための道具である。
それらは生活を具体化し、客観化し、そして世界をつくる両輪である。

2017年度の三学会共催シンポでは、生活に寄与する道具の使われ方のレンジを以上のように定め、様々な環境の中で用いられてきた、特色ある野良道具/フィールド・デバイスを紹介し、これからの生活空間と道具のあり方を探る。

●概要
進行は面矢慎介先生(道具学会会長)、特別講演に芸術、建築に造詣の深い石毛直道先生(文化人類学)を迎えます。
日本生活学会からは若手の松村悠子先生 (大阪大学大学院人間科学研究科 )が離島のエネルギー開発をレポートします。
日本民具学会の岩野邦康先生 ( 新潟市新津鉄道資料館・学芸員 )は稲刈り機と米生産の風景に焦点を当てます。
道具学会の高梨廣孝先生(元静岡文化芸術大学教授・プロダクトデザイナー)はオートバイを中心に据えて生活空間をはかります。精緻なオートバイの模型が複数展示される予定です。

テクノロジーの側面から生活を考えます。
http://lifology.jp/01/wp-content/uploads/2018/01/20190310sympo2.pdf

・基本情報

2017年度三学会(日本民具学会・道具学会・日本生活学会)共催シンポジウム
「野良道具/フィールド・デバイス 世界をつくる」
日時:2018年3月10日(土)13:00-17:30
会場:早稲田大学理工学部55号館N 1階会議室
入場無料・事前予約不要

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P.I.Lの45rpm,12in.LP “Metal Box”をOnkyo GS-1で再生する


実は趣味のオーディオ関係のブログを誰にいうこともなくたまに書いてきたのですが、最近あるアイデアを実行できました。その方法がやや実験考古学的成果になったので紹介させていただきます。同年代(1980年代初期)にそれぞれ限界を尽くしたレコードとスピーカーを組み合わせるという実験です。完全に趣味です。

P.I.Lの45rpm,12in.LP “Metal Box”をOnkyo GS-1で再生する

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2018年以降は、どう生きるか(どのように生活しうるか)をテーマに生きます


のら犬についてのスケッチ(連作)エッチング・1992年ごろ

迎春です。あけましておめでとうございます。

昨年は色々な大きなイベントを無事切り抜けることができました。
おかげさまで個人的にも「かたち三部作」(自分で言っているだけですが)のうち、環境のかたちをテーマにした『動く大地、住まいのかたち プレート境界を旅する』(岩波書店)を、うれしい番外編ですが『実況近代建築史講義』(LIXIL出版)を刊行することができました。

今年はかたち三部作の残り二作を公刊できる予定です。
ひとつは民家から未来の家族の器まで「家」というかたちを扱った『家 コンテクストを動かすかたち』(仮・インスクリプト)です。部分的にこのブログで公開しています。
もうひとつはジョージ・クブラー著『時のかたち』、人間が作り出してきた事物の時間史を芸術的(役に立たない)側面から、それも物理学用語、数学用語を駆使して描き出した名著“The Shape of Time: Remarks on the History of Things”1962の翻訳です(加藤哲広先生校閲・鹿島出版会)。
これで2000年以降にしぶとく続けてきた作業がほぼ全て公開されます。と同時に戦後を空間として重層的に歴史化する戦後空間研究会にも参加しました。

これまで都市・建築をめぐる無意識的前提に特化して作業をしてきましたが、これからはその知見を実践的に統合して、今後どう生きるかを自分の体や体験を通してさらに考えてみたいと思います。

千年村で会いましょう。都会の片隅で会いましょう。

 

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陣内秀信氏・連続講演(法政大学フォーラム)に参加します。11月07日


現在開講中の無料、一般公開の連続講演シリーズがあります。法政大学建築学科で行われている建築フォーラム2017「建築史の可能性への挑戦」です。来年3月に法政大学を退任する陣内秀信先生を中心とした連続フォーラムで、陣内先生の最終講義も建築フォーラムの最終講義として予定されています。11月7日火曜日の「都市・地域の古層、基層」の回に招かれました。

【法政大学建築フォーラム2017】
陣内秀信 連続対談+最終講義
毎週火曜18:30-20:30@法大市ヶ谷田町校舎5F

陣内先生と当方がそれぞれ40分ほどのレクチャーを行い、その後ディスカッションをします。講演タイトルは「私と『イタリア都市再生の論理』」としました。陣内先生の『イタリア都市再生の論理』SD選書はその後の自分の方法に深く影響を与えた一冊です。

当日はページ内の具体的な言葉と被った影響についてお話ししたいと思います。この週末にプレゼンを作り終えましたが、私自身の作業を初めて振り返ることもできてよかったと思います。特に後続の研究者の方は是非おいでいただき、ディスカッションに参加いただけると幸いです。

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以下、プレゼン作成中に参考にした、ネットに転がっている状態の過去の関連論文のリンクをお伝えしておきます。上の二本が『イタリア都市再生の論理』を読みながら書いたものです。

類型分析に基づく編年シミュレーションを用いた近代大阪長屋群の存続条件の分析(日本建築学会技術報告集 第16号,319−322,2002年 12月)

弱い技術について(日本建築学会技術 報告集 第18号 ,353−356,2003年 12月)

都市はたたる | 都市連鎖研究体
City, Haunted | Laboratory for Catenated Cities
掲載『10+1』 No.32 (80年代建築/可能性としてのポストモダン) pp.169-186

そのほか11月25日には、千年村プロジェクトの成果発表会とシンポジウム「千年村はいかに可能か」も開かれます。これについてもまた報告いたします。

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地質学からの便り 書評『動く大地、住まいのかたち プレート境界を旅する』が届く(伊藤孝/茨城大学)


『動く大地、住まいのかたち プレート境界を旅する』岩波書店、2017年3月について建築家の島田陽さんが、自らの旅行体験を重ね合わせつつ書評されています。

1000年後のBuildinghoodに参加する──中谷礼仁『動く大地、住まいのかたち』評

そして本日、雑誌『科学』連載中以来ずっと気になっていた地質学領域からの便りが届きました。書評です。
同書は建築の歴史を生業とする私にとって未開拓だった地質学にも触れた著作です。旅の途中でその必要性を強く感じにわか勉強をしたのです。こんなふうに全く新しい領域を対象とする時、先行研究に対しておおきな間違いをしている可能性があります。

そのため書籍化前に科学雑誌に連載させてもらい、特に地質学の専門家からお叱りなど受けられれば、後に反映することができると思っていました。しかし世の中そう甘いものではなく、目立った反応はありませんでした。書籍として恐る恐る世に問うたところでしたが、ようやく、それも本丸の日本地質学会の会報に同書の書評を掲載した旨、執筆者の伊藤孝先生からご連絡がありました。地質学会のご厚意でこの書評は一般公開となりました。

紹介 『動く大地、住まいのかたち プレート境界を旅する』・日本地質学会News 2017年9月号,4p.(書評がダウンロード(PDF)できます。)

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日本地質学会といえば、今から100年以上前の1893年に創立された日本の地球諸科学関連学協会の中で最大規模の学会。約3800人の専門家、実務家、学生、同好の士が所属しています。

伊藤孝先生は地質学、海洋地質学、地球化学、鉱床学が専門で、特にマンガン鉱床の時空分布,およびその地球化学的・同位体的特徴からみた地球表層環境史(リンク先より)の研究ということで、否が応でも想像がわきたつ研究領域です。

以前、千年村プロジェクトの千年村候補地マップ構築途中で、平安時代後期編纂の辞書『和名類聚抄』記載の郷名の比定地を空間プロットしていました。その最中、偶然、ベース地図を地質図にしてみた時の村落立地と地質図との深い関連を発見して地質に興味を持ちました。その時以来、ようやくここまでたどり着いたかという印象です。どうぞ今後ともよろしくお願いします。

 

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『実況 近代建築史講義』LIXIL出版が公刊されます。


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私は時間内にきちんと終わる授業を行うことが好きで(長い発表を聞くのが苦手だからなのですが)、そのために色々と策を練っています。それから私が学生時代に感銘を受けた授業もあります(本書のあとがきに詳しく書きました)。

先達が実践してきた授業方法を受け継ぎながら、小気味好い授業を心がけ、学生からの情報も取り入れ、その内容を毎年アップデートして15年以上経過しました。この授業を過去に受け、現在編集者となっている方から書籍化の提案をいただきました。現場収録した講義をもとに補筆整理したのがこの本です。この講義の主な教科書は不朽の名著『西洋建築史図集』(彰国社)です。解説が別に分かれているので図版で自由に検討できるからです。あと磯崎新+篠山紀信による『建築行脚』(六耀社)を常に参考にしています。中盤以降の西洋近代、近代日本編は独自アップデート色が濃いです。2017年10月15日発行です。おもしろいと思います。ぜひ手にとってください。(続刊も準備中です)

以下にイントロダクションの部分と目次を公開します。

歴史とは何か

講義を始めるにあたって、ひとつ大切なことを申し上げておきます。残念ながら私の講義では流れるような通史をお伝えすることはしません。それよりも、各時代のピークを表すような、問題提起的、あるいは象徴的な建造物とその背景をトピックとして説明していきます。点としての優れた建築的事象を、空間に置いていくようにお伝えします。

するとその点と点とがつながり、意味が生まれ、さらに点が増えると平面が出来、時には立体にもなる。その空間は次第に新しい事象を配置できる場になっていきます。それは建築の星座をつくることであり、私はそのためのガイドとなる基準点、ようはいくつかの印象的な点と粗い座標軸を提供しようとしています。

また、これも重要なことですが、歴史とは「少なくとも2つ以上の事象の間に発生する、想像的な時空のこと」です。誰しも考えればわかることですが、はるか昔からまったく同じ立場で歴史を紡いできた書記官がいるわけではありません。今後ともそんな職業は絶対に登場しないでしょう。なぜなら、たとえ何か物語る事柄があったとしても、その解釈や意味づけは人や時代によって大きく異なるからです。歴史の教科書に掲載されるのは、あまたの解釈から紡ぎ出された暫定的なものです。

むしろ、こう言ったほうがいいでしょう。過去がわからないからこそ、歴史という学問が成立するのです。そのときに重要なのは、むしろ想像的な時空を誘発する事柄であり、またそれによって出来上がる時空をさらに精緻に、納得いくものにする新しい事柄の発見とその配置の連続作業なのです。もしこの講義で歴史に興味が生まれれば、新しい星を探すように、皆さんがそれぞれカスタマイズさせながら、新しい星座を描いて、ゆくゆくは世に問いかけてみてほしいと思っています。

目次

歴史とは何か、近代とは何か ……………… 002
I  西洋近代 ルネサンスから産業革命へ
第1回 時間の宙づりとルネサンス ……………… 008
第2 回 マニエリスムからバロックへ ……………… 018
第3 回 新古典主義と知性の暴発 ……………… 032
第4 回 折衷と廃墟 19世紀英国 ……………… 044
第5 回 産業革命と万国博覧会 20世紀直前の世界建築 ……………… 058

II  モダニズムの極北  20世紀芸術運動と建築
第6回 基準・空間・構築 ミース・ファン・デル・ローエ ……………… 074
第7回 構成・速度・時間 アドルフ・ロース/ル・コルビュジエ ……………… 086
第8回 ランダムネス・革命・宇宙 未来派/ロシア構成主義/バックミンスター・フラー ……………… 102

III  近代+日本+建築
「近代+日本+建築」への招待 ……………… 122
第9 回 白いくりがた 様式的自由と擬洋風建築 ……………… 124
第10 回 空白のメダイヨン 明治建築の成熟と崩壊 ……………… 138
第11 回 平和の発明 丹下健三について ……………… 154
第12 回 クリティカル・グリーニズム 日本の建築1970年代以降 ……………… 172

講義の公開に際して ……………… 198
収録情報/講義情報 ……………… 201
図版出典 ……………… 202
索引 ……………… 203
付録:近代建築史講義年表

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第4回吉阪隆正賞は黃聲遠+田中央工作群(台湾・宜蘭)


受賞者:黃聲遠+田中央工作群
Huang Sheng-Yuan + Fieldoffice Architects

業 績:台湾・宜蘭における持続的かつコミュニケイティブな空間デザインの実践
Practical, Sustainable, Communicative Design Activities in Yilan, Taiwan.

※黃聲遠+田中央工作群のプロフィールはこちらに掲載しています。

すでに専用ホームページで紹介しておりますが、授賞式・講演会のフライヤーができましたので、当方でも紹介いたします。

YOSIZAKAFANFLYEROMOTEYOSIZAKAFANFLYERURA

■授賞式ならびにシンポジウム

■日時 2017年11月27日(月) 18時00分~

■会場 早稲田大学 西早稲田キャンパス 57号館2階
(地下鉄副都心線西早稲田駅徒歩0分、JR山手線・西武新宿線・地下鉄東西線高田馬場駅より徒歩15分)
(会場地図:https://https://www.waseda.jp/top/access/nishiwaseda-campus

■参加申し込み 不要

■入場料    無料

■主催 吉阪隆正賞実行委員会

■共催 早稲田都市計画フォーラム

■問い合せ先:吉阪隆正賞実行委員会
〒169-8555 東京都新宿区大久保3-4-1

早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科後藤春彦研究室気付

Mail: info@yosizaka-award.org
URL: http://www.yosizaka-award.org/

以下ホームページからの転載

受賞理由:
『最近いつも想うこと。
われわれが一緒に仕事をする仲間にこんなに恵まれているのは、
何か要因があるはずだ。
しかも、この「自発的建築学校」を自分たちの家にしてしまった。
もしこの親密な空間が、無限の可能性を秘めるなら、
人と人との間の親密さも、無限の可能性がある。
青春、それはいつも幾重にも折り重なったランドスケープの中にある。』

ギャラリー・間の展覧会のカタログの最後に載せられたこの言葉ほど、黄聲遠(ホァン・シェン・ユェン)さんに何故この賞をもらっていただくかを能弁に語っているものはありません。みなさんがこの言葉の中に感じられたこと、それがそのまま受賞理由です。
彼がこの通りの活動をしていることは、事務所を訪れ見ればすぐに分かります。若者とともに食べ、飲み、語り合い、議論し、それが建物や構築物になってゆく。豊穣なイーランの自然のように、その過程で人も育っていく。ここではうらやましいほどに、建築が人を結びつける触媒となり、人が建築を作り上げる触媒になっています。
作業は共同体の中で育まれ、醸成され、具体的なものに置き換えられていきます。人間は不完全なものであり、それ故、他者を理解しようと努力し、他者を認め、助け合い、補い合い、その結果、たとえ完璧ではないとしても形に移していく。これは吉阪がことあるごとに不連続統一体として若者に語りかけていたことです。出来上がったものには当然のことながら、矛盾や様々な不協和音が混ざり込みます。でも、綺麗に整理されたものよりは不整合な豊かさを愛する姿勢、黄さんの眼差しは常にそこに注がれています。
こうした造り方や建築の在り方は、わが国のみならず近代社会ではすでに失われたものです。かつてのU研や吉阪研究室に漂っていた吉阪を中心とした強烈な人の磁場のようなものを、彼の活動は思い出させてくれます。ノスタルジックな気持ちで振り返るのではありません。グローバリゼーションの名を借りた資本主義が世界の隅々まで行き渡り、インターネットの情報網が地球を覆い尽くす世の中です。このような時代、黄さんのような姿勢の中にこそ建築と人との本質的な関係を蘇生させる手立てが潜んでいると信じます。ここに本当の意味で、建築という価値が生き生きと時代を生き延びる可能性を見ることが出来ます。
審査委員会は、現地に赴き、意義を議論し、生み出された作品を吟味し、黄聲遠さんと彼が運営する事務所である田中央工作群の一連の作品と活動が吉阪隆正賞にふさわしいものと判断しました。

第4回吉阪隆正賞審査委員長
内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

<第4回吉阪隆正賞選考委員>
委員長:内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)
委 員:藤井敏信(国際開発学・東洋大学名誉教授)
北山恒(建築家・横浜国立大学大学院教授)
後藤春彦(都市計画家・早稲田大学教授)
中谷礼仁(歴史家・早稲田大学教授)
(敬称略)

 

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近代美術館レクチャー「動く大地の住まいとジェネリック・シティ」2017年8月19日14時から


現在近代美術館(竹橋)で開催中の、日本近代の住宅建築展「日本の家」に併せてレクチャーを行います。直前になりましたが、告知させていただきます。最近考えていることの一端を、発表させていただく機会としました。戦後にあまり関係ないのですが、細かいことは気にせず大きく考えましょう。

original
参考は既刊の『動く大地、住まいのかたち プレート境界を旅する』岩波書店2017年3月の他に、その後、動く大地の旅の時にほとんど出会わなかった近代素材としての鉄素材に関連して考察を進めた分を収録した、近刊『世界建築史』(共著)彰国社、2018年予定の内容を紹介します。

レジュメを公開します。

 

1. プレート境界と古代文明圏

2011年3月11日東日本大震災発生、日本が特殊な場所(唯一無二)であるという認識
日本の国土はプレート境界に位置。その基盤はユーラシアプレート。
それらユーラシアプレート境界付近に、主要な古代文明の発祥地が位置。
破壊だけではなく文明誕生の要件にもなっているのではないか?

重要点)
地球の活動は自律的で莫大なエネルギーを含んでいる。
自然環境とは地球時間と地球のエネルギーが作り上げた構築的結果でもある。
その環境を基盤として、人間が各地でその大地に適合しうる生存方法を見出した時に、
人間の生活ひいてはその文明は発生した。

 

2. Buildinghood 人々の暮らしを支える大地からの構法

Buildinghoodの気づき
ある地域の人々の生活の成り立たせ方(=Livelihood)の中で、その中心をなす空間の構築方法
LiverihoodとBuildinghoodとの関係を、褶曲運動によって生まれた世界最大の山脈である
ヒマラヤの麓に位置する高山地帯のサトリ(saitoli)という小さな村で事例報告。

Buildinghoodは人の住む場所、集落形成の方法そのもの。
現在でも世界各地の集落の多くは、その近傍の大地を素材として利用して集落を作り上げている。
その意味で集落とは大地をその皮一枚浮かして、
そこに人間が住まうことのできる空間(ルビ:あきま)を作ることと定義。

その浮かせ方、要は空間を作る方法は大地が産出する素材によって大きく異なる。
これが大地からの構法(Builinghood)の違いとなる。
以下、代表的な、石、土、木についてその特徴をあげる。

 

3. 芸術をも産んだ石灰岩 石は建築の父

石は横穴洞窟などのもっとも自然状態に近い住居の基盤。
そのような原始的な状態から次第に、石を材として切り出し、細部を加工できる技術が進むと、
石がもつ圧縮に対する耐力が構法として期待されるようになった。
加工した石を垂直に積み上げて作られていくギリシャ神殿建築が典型→
まぐさ(柱梁)式の石造建築の誕生。
しかし石造建築における最大の弱点は石の塑性によるせん断(折れ)。
この弱点は石を梁などの横材に用いた時に顕著に現れる。比例と素材の関係が重要
→ギリシャ神殿の美的テーマ

石灰石、大理石が神殿建築の素材としてよく用いられたのは、それらが石としての
耐久性を確保しつつ、比較的軽便なこと、肌理、色目が均質であること、加工がしやすいこと。
人間に彫刻芸術という重要な技芸を授けた(ギリシャ、ペルシャ帝国など)。

 

4. 文字をも発明した土-レンガ 土は建築の母

土は地球の表面に露出あるいは隆起した各種岩石が風化した結果の微細な破片の総称。
沖積世(完新世)とよばれる、およそ1万年前から現在までの間にいたるところに堆積。

土は遍在。土を建築素材として用いるには加工方法の発明が必要。
→レンガ製造。

土を型枠で整形し乾かし固める(日干しレンガ)だけで、
土はそれを石造のように組積することができるようになった。
レンガの大きさは人間の作業上の普遍的な寸法に深く関係。
レンガは土くれから空間を人の手によって作らしめる発明。
レンガによる建築行為はジグラットの遺跡立地に代表されるように
メソポタミア周辺地域で特に栄えた。

そこは同時に文字の発明地だった。
シュメール人による楔形文字という世界最古の文字の発明。
生乾きの粘土板に葦のペンを押し付けることによって記録。

レンガによる組積はその後一大発展を遂げる→6. 都市のBuildinghoodへ

5. 共同性を生んだ木

建築行為には、ある時点で集団による共同行為が必要。
その共同性を建築発展の契機として大きく内在させていたのが木材。

木造において、単独的な作業で可能なのは、地面に穴を掘って柱を立てる掘立柱。

その後の弥生時代においては高床式倉庫が発展した。
床は大地を離れ空中に浮上→軸組が発展し、柱をつなげる貫等の横材が発展。
仏教伝来とともに伝わった建築様式の影響によって、石場立てを採用。

これら施工はもはや単独、もしくは少人数の施工者のみではなしえず、
縦横の木材を同時に共同で組み立てる必要があった。
木造建築が社会的様式として発達した地域では、
木造建築の構法には必ず強い共同性が刻印されている。皆でできる施工レベル。結(ユイ)など。

日本の伝統的木造建築のみならず、各地には様々な木造建築の儀式がある。
たとえば、インドネシア・スンバ島のソダン(Sodan)という集落で実見した上棟の様子、
村一丸となった建築の風景。

6. 都市のBuildinghood

大規模な歴史的都市は一般に土の大地に立地。
河沿いのフラットな低地→建築の母との関連性。
柱や梁を持たない組積造であるレンガには、最大の問題→屋根をレンガで覆い渡すこと。
平面規模の限界を克服したのがアーチ構造。

アーチ構造→素材間の摩擦で円弧状に組み合わせて、荷重を両脇の壁に一体的に伝達する方法。
アーチ面を水平に押しだせば、筒状のボールト構造。
アーチの中心を支点として回転させれば、ドーム。

この構法は土や切り石しか手に入らない環境で人々が空間を作るための
ごく日常的な技術からはじまった。現存するエジプト・テーベで作られた型枠なしのボールト倉庫。
庶民的技術+高度な幾何学性の統合→都市発展の基礎
アーチの持つ幾何学的原理性は大空間に発展する可能性があった。
それを実現したのが、ヨーロッパ、地中海周辺世界を覇権したローマ帝国。

ローマはレンガの帝国。
その主要構造はもっぱらレンガ造。
ローマの建築技術が、日常から発生したレンガ・アーチ技術と地続きであったことこそが、
帝国化に幸いした。→弱い技術(中谷「セヴェラルネス」2005、増補11)

セメントの発明
切石を骨材としてセメントによって硬化させるこの技術はいわば土と石の結婚、混合技法。
紀元128年、ローマ市内に直径43メートルの球体を完全に収納する万神殿=パンテオンが竣工。

スキンチ、ペンデンティブへの展開
使い勝手のよい方形の平面にいかに円形のドームを載せるかという課題。
その主な解決法がスクィンチ、ペンデンティブと呼ばれる二つの構法。
土くれから作られた都市とは以上のような幾何学による建築の増殖過程。
例)シリア・アレッポのパサージュ

7. 鉄の特殊性 ジェネリック・シティのBuildinghood理解のために

現在進行形の、ジェネリック・シティとも名付けられた世界各地で急速に拡大する
「似たような」都市の作られ方はどのように位置付けられるか。

ジェネリック・シティは非歴史的な都市の具現化として規定(クールハース)、
果たしてそれは正当な評価だろうか→なぜなら非歴史な具体物はありえないから。

ジェネリック・シティのBuildinghoodの特徴→軽く、メンテナンス不要で、
いつでもスクラップでき、かつ再生できるもの。

伝統的なBulidinghoodの遍在性に対して、
19世紀の産業革命時に突然現れた建築用の鉄素材、特に鋼鉄こそが、
現在の都市の、横に上下に拡張し続ける特性(ジェネリック的Buildinghood)を具現化。

鉄という、自己形状を様々に変容、伸長させうる素材そのものの尋常のなさ。
→WTC(ワールド・トレード・センター、1972)が一瞬にして溶け去るという異常な事態。

INTERACTIVE SKYSCRAPER MAPSによる超高層建築の立地の基本条件。
超高層建築はその建設と使用双方に
大規模な交通移動が一体的に計画されていなければならない。
超高層都市の到来を告げたアメリカにおける歴史的二大都市、シカゴとニューヨーク
鉄鋼はどこからやってきたか。
なぜアメリカの製鉄/製鋼所が東海岸に集中しているのか。

かつ鉄には、極めて特殊な地球時間が含まれていた。
鉄は、私たち人類がこれまで見たこともなかった地球時間を含めて私たちに直面。

 

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