「映画と大地の間にあるもの 『柳川掘割物語』その後」 雑誌『ユリイカ7月臨時増刊号 高畑勲の世界』に掲載されました。


雑誌『ユリイカ』の編集部から連絡をいただきました。逝去された高畑勲が監督した『柳川掘割物語』1987公開(DVDで発売中)について書いて欲しいとのことでした。

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恥ずかしながら全くこの水濠地域を描いたドキュメンタリーを知りませんでした。実は柳川にも行ったことがありませんでした。とりあえずDVDを見てびっくり。埋め立てられようとしていた掘割再生に関わる人々の活動を記録しているのですが、2月の寒い時期に行われる水抜き一斉ヘドロ掻き出し作業での地域の人々の様子などまさに格闘。また有明海を控えて干満によって毎日海面下に没する沼地を人の住むように灌漑した結果の特有の田園風景が記録されていました。え、こんな場所日本に残っていたのかと思い、教育的効果も高いため数名の志願学生と一緒に柳川調査を私たち自身も行いました。

テーマは、高畑が記録した地域活動や水濠の風景が今でも健全に残っているのか、変わったとしていたらどのように変わっているのかという変容調査です。高畑たちが記録した地域活動の大変さが今でも続いているのだろうか。その現在を見たかったわけです。

その結果は是非『ユリイカ』本誌にてご覧いただければと思うのですが、少し興味を抱いてくれるように以下余談を書いておきます。

まず泊まった旅館ですが、朝食用の座敷に通されるとそこに高畑勲が描いた色紙が同映画の撮影監督高橋慎二氏の色紙とともに長押上に乗っかっていました。いつものその土地らしい旅館を探すのが幸いして、どうやら高畑ら一行も泊まった旅館に最初から遭遇したようでした。こうなれば調査は早いもので、そのご主人に相談して、当時の関係者の方にもお会いしと、調査は縁の鎖を伝って行うことができました。(地元の旅館予約にネットで空きがありませんと言われても電話すれば少人数なら宿泊は可能なことが多いです)

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さいふや旅館の長押の上の高畑監督による色紙(ぶれています)

ヒアリングに協力いただいた、さいふや旅館の内山耕造様、旧柳川藩主立花家の立花民雄様、柳川市産業経済部水路課の松永久課長、三小田祐輔係長には示唆的なお話や多くの情報をいただきありがとうございました。立花氏によると地元の上映会で公開した時には上映時間4時間を超えていたと言います。さらにその前にはもっと長かったとも。今現在私たちが見ることができるのは2時間45分版にDVDでは22分の終章が付録に収録されていますが、これはまさに終章なので欠かさずにご覧ください。

 

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有明海の潟の様子です。生き物が今生まれているかのような風景です

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さいふや旅館の看板です

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旅館の横に併設されている喫茶室。確かに二馬力ぽいかも。

私が最後に感動したのは、柳川周辺の田園地帯の、初源的なため池をひきつぐ複雑な水濠の様子でした。柳川の体験は確かに地域教育に欠かせないと思いました。

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rhenin について

中谷礼仁(なかたに のりひと)歴史工学、アーキオロジスト。早稲田大学建築史研究室所属、教授、千年村プロジェクト、日本生活学会、日本建築学会など。著書に『動く大地、住まいのかたち』、『セヴェラルネス+』など。
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