『動く大地、住まいのかたち プレート境界を旅する』が2018年日本建築学会著作賞をいただきました。


『動く大地、住まいのかたち プレート境界を旅する』(岩波書店2017)が2018年日本建築学会著作賞をいただきました。公式発表ページはこちらです。

受賞は、自分の苦労や喜びの内実が他者にも通じるものであったことが確認できるのでとても嬉しいことです。どなたかを存じ上げることはできませんが、今回の選評にとても励まされました。

これまでの比較建築史が、国家の枠組みや情報量に左右され、対象の選択が恣意的になりがちであるのに対し、本書ではプレート境界という地学事象を方法上の根拠にしており、社会的な恣意性が排除された斬新な切り口が提示されている。そもそもプレート境界に沿ってユーラシア大陸を横断するという試みを実践した建築学者は皆無であろう。言語も文化も気候も多様なこの地域を横断するという発想自体が驚異的だが、筆者は躊躇なく出かけ、余所者の入り込まない奥へと踏み込んでいく。生活に深く分け入るその体験に裏打ちされた叙述は、新鮮な発見に溢れた優れた比較文明論ともなっている。

本書は地球の地殻を構成しているプレート境界に特有な環境形成とそこでの建築文明や住文化との密接な関係を、現地訪問と文献調査を併せて報告した建築論的旅の記録です。

執筆の発端は東日本大震災発生一ヶ月後の被災地訪問からでした。土地が沈んだ現場に立ち尽くし、日本以外のプレート境界地域でも同じようなことが起こっているのだろうかと、ふと考えたことから始まりました。
その後様々な種類の地図を買い集め、日本も属するユーラシアプレートの境界が、東南アジア、インド、イスラム、地中海、アフリカの諸地域を横断しジブラルタル海峡にまで達していることを確認しました。にわか勉強を始め、古代文明の多くがプレート境界付近で発生していることにも気づき、破壊のみならず地殻活動の創造的側面を意識し始めました。プレートテクトニクスが新たな建築的意味を持って現れてきました。準備期間中に教えを乞いにいくと、無謀な計画を心配して同行してくれた先行研究者が複数登場しました。現地での会話は新たな発見に欠かせぬものとなりました。たくさんの記録をとりました。このブログにも途中、現地から送った記録などが残っています。

本書は、当方の思いつきをきちんとした活動に育ててくれたたくさんの人々や関係機関による、とうとい協力の賜物です。本書のあとがきにも書きましたが今でも思い出すのは、土地土地の激しい風景を一緒に経験したそんな人々の姿や声です。
そしてそもそも地球自体が人間に建築活動をうながした、大いなる建築活動であったことを身を以て知ることとなりました。

2-0-7. ヤズド(Yazd)周辺で撮影した山の景色。二つの山の円弧が繋がったカーブを構成している。.jpg

この活動の記録がこれからも特に若い人々に受け容れられ、読み続けられることを強く願っています。

以下に同学会からの求めに応じて作成した概要を置いておきます(途中現地動画あり)。

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rhenin について

中谷礼仁(なかたに のりひと)歴史工学、アーキオロジスト。早稲田大学建築史研究室所属、教授、千年村プロジェクト、日本生活学会、日本建築学会など。著書に『動く大地、住まいのかたち』、『セヴェラルネス+』など。
カテゴリー: "On the Edge Tour 2013", Publications パーマリンク

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