『実況 近代建築史講義』LIXIL出版が公刊されます。


71nziM8rf5L

私は時間内にきちんと終わる授業を行うことが好きで(長い発表を聞くのが苦手だからなのですが)、そのために色々と策を練っています。それから私が学生時代に感銘を受けた授業もあります(本書のあとがきに詳しく書きました)。

先達が実践してきた授業方法を受け継ぎながら、小気味好い授業を心がけ、学生からの情報も取り入れ、その内容を毎年アップデートして15年以上経過しました。この授業を過去に受け、現在編集者となっている方から書籍化の提案をいただきました。現場収録した講義をもとに補筆整理したのがこの本です。この講義の主な教科書は不朽の名著『西洋建築史図集』(彰国社)です。解説が別に分かれているので図版で自由に検討できるからです。あと磯崎新+篠山紀信による『建築行脚』(六耀社)を常に参考にしています。中盤以降の西洋近代、近代日本編は独自アップデート色が濃いです。2017年10月15日発行です。おもしろいと思います。ぜひ手にとってください。(続刊も準備中です)

以下にイントロダクションの部分と目次を公開します。

歴史とは何か

講義を始めるにあたって、ひとつ大切なことを申し上げておきます。残念ながら私の講義では流れるような通史をお伝えすることはしません。それよりも、各時代のピークを表すような、問題提起的、あるいは象徴的な建造物とその背景をトピックとして説明していきます。点としての優れた建築的事象を、空間に置いていくようにお伝えします。

するとその点と点とがつながり、意味が生まれ、さらに点が増えると平面が出来、時には立体にもなる。その空間は次第に新しい事象を配置できる場になっていきます。それは建築の星座をつくることであり、私はそのためのガイドとなる基準点、ようはいくつかの印象的な点と粗い座標軸を提供しようとしています。

また、これも重要なことですが、歴史とは「少なくとも2つ以上の事象の間に発生する、想像的な時空のこと」です。誰しも考えればわかることですが、はるか昔からまったく同じ立場で歴史を紡いできた書記官がいるわけではありません。今後ともそんな職業は絶対に登場しないでしょう。なぜなら、たとえ何か物語る事柄があったとしても、その解釈や意味づけは人や時代によって大きく異なるからです。歴史の教科書に掲載されるのは、あまたの解釈から紡ぎ出された暫定的なものです。

むしろ、こう言ったほうがいいでしょう。過去がわからないからこそ、歴史という学問が成立するのです。そのときに重要なのは、むしろ想像的な時空を誘発する事柄であり、またそれによって出来上がる時空をさらに精緻に、納得いくものにする新しい事柄の発見とその配置の連続作業なのです。もしこの講義で歴史に興味が生まれれば、新しい星を探すように、皆さんがそれぞれカスタマイズさせながら、新しい星座を描いて、ゆくゆくは世に問いかけてみてほしいと思っています。

目次

歴史とは何か、近代とは何か ……………… 002
I  西洋近代 ルネサンスから産業革命へ
第1回 時間の宙づりとルネサンス ……………… 008
第2 回 マニエリスムからバロックへ ……………… 018
第3 回 新古典主義と知性の暴発 ……………… 032
第4 回 折衷と廃墟 19世紀英国 ……………… 044
第5 回 産業革命と万国博覧会 20世紀直前の世界建築 ……………… 058

II  モダニズムの極北  20世紀芸術運動と建築
第6回 基準・空間・構築 ミース・ファン・デル・ローエ ……………… 074
第7回 構成・速度・時間 アドルフ・ロース/ル・コルビュジエ ……………… 086
第8回 ランダムネス・革命・宇宙 未来派/ロシア構成主義/バックミンスター・フラー ……………… 102

III  近代+日本+建築
「近代+日本+建築」への招待 ……………… 122
第9 回 白いくりがた 様式的自由と擬洋風建築 ……………… 124
第10 回 空白のメダイヨン 明治建築の成熟と崩壊 ……………… 138
第11 回 平和の発明 丹下健三について ……………… 154
第12 回 クリティカル・グリーニズム 日本の建築1970年代以降 ……………… 172

講義の公開に際して ……………… 198
収録情報/講義情報 ……………… 201
図版出典 ……………… 202
索引 ……………… 203
付録:近代建築史講義年表

広告

rhenin について

中谷礼仁(なかたに のりひと)歴史工学、アーキオロジスト。早稲田大学建築史研究室所属、教授、千年村プロジェクト、日本生活学会、日本建築学会など。著書に『動く大地、住まいのかたち』、『セヴェラルネス+』など。
カテゴリー: Publications, Uncategorized パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中