Delos神殿の実測 Long Architectural Journey along edge of Plate Tectonics, from Greek to Gibraltar


2013年6月11日早朝、早稲田大学中川武研究室助手の酒井氏がマルタを発った。ギリシャからマルタまで彼に同行いただいた。今回の目的の旅の場合、ベストは現地語の話せる研究者を随伴すること、ベターは同じ志を持つ二人であーだこーだ検討しながら想像すること。一人だと、なんとなく想像の輪郭がぼける。

少し時間が空いたので、試みにギリシャのDelos神殿(紀元前1400年以降、ローマ時代まで)の部分小実測の様子と、昨日見学したマルタの古代建造物(紀元前3000年以降、Tarxien Temples, Hagar Qim Temples, Mnajdra Temples, 最も意味不明とされるCart Ruts)訪問の様子を紹介してみたい。なお、ギリシャ、マルタいずれの国も訪問場所で配布されるパンフレットが簡潔かつきわめて優秀で、これ集めるだけで基本資料としては充分である。

1.Delos神殿のモデュールと方位性
この神殿は島全体が遺跡群である。時代も重ねられ複雑な複合体である。全体配置図を見ると、北に向けて遺跡全体の主要軸線が決定されている。
delossite
東南に小高い山があり遠くから見ると、この場所が宗教的聖地となったことには、この山のランドマーク的要素が強いと思われる。

私たちは南側に集合していた住居部分から山にかけてまず登り(この部分は直感的に古いと思った)、それからギリシャ的な部分の北側に降りて戻った。
その間に配置図中17あたりの窓の詳細と、ヘラ神殿(25)の横にあった棺(見晴らしとしては一等地なので相応の人の墓と思う)等について実測してみた。実測は二人いると捗る(ちなみに私は古くからのメジャー実測派である。最近のレーザー実測は通し寸法を測ることができないので、モジュールを直感的にその場で理解できないからだ)。

1-1.前後逆になるが、まずは実測した寸法からわかることを述べ、次にこの小山を含んだ遺跡が持っている場所的特性について話し合ったことを紹介する。

delos1
これが窓枠まわりの詳細である。実測すると建設した人の考えていることが身近になってくる。方立て、上下の框ともメートル法では160mm前後で統一され計画寸法であることがわかる。窓台までの高さは1010mmでやや高め。開口部は高さ1050mm×幅1110mmほぼ正方形である。下框の壁への食いつきもよく考えられている。そもそもきちんと考えないと建築はこんなに残らないので、古代人というのは全く我々と変わらないと思う。

次は壁の積み方。玉石混淆であるが、他所から持ってきた品質のいい大きな大理石を基本として、その間に割れやすい片岩化した石灰岩(専門的に何と言うかは知らない)を複層させて調整している。この平石の方こそが、この島の石である。その調整のリズムが現場仕事的だが精緻な絶妙さにあふれていてみていて飽きない。

円形劇場があったのでその擁壁の石積みも測ってみる。するとおおよそ400mm近辺のモデュールでくみ上げられており、このモデュールが円形劇場の階段高さ(ふみ面)や座席の高さに深く関連してる。きちんと作っているなあと思う。

実測の最後は墓石。基壇、亡きがらの入るボディ、そして棺を覆う屋根と、建築要素の基本だから実測してみたかったのだ。現地でささっと描いたスケッチなのでプロポーショナルではない。また基本寸法を決定するには二つほど決定的な箇所がとれていない欠陥があることに後から気づいた。写真と一緒に判断するしかない。結果的に基壇平面はおおよそ正方形二つ、墓石の寸法決定分析は皆さんもどうぞ。棺内部の空間は1670mm*365mm*730mmである。亡きがらの大きさは予測できる。


delos2

1-2.小山に上ってみた。絶景である。方位を確認してみる。東西南北それぞれ絶妙に何らかの島の頂きやくぼみにあたる。デロス神殿はこの地域の島々の共同体の総本山的位置づけであるので、この美しい形状の山と以上のような絶妙なロケーションを持つこの島が選ばれたのだと直観した。また小山の上には何もない。これも昔から何もなかったのだと直観した(間違っていたらすいません)。というのもこの神殿がギリシャ以前のミケーネ文明から発祥しているので、クノッソスを見た時の見地から検討すれば、神殿は低い場所におかれ、彼岸的な山は、それ自体が聖なるものだからである。アテネのアクロポリスもパルテノンを作るにあたって他のところから石を持ってきたのは、その丘自体を加工することに抵抗があったのもその一因である。この要因も山の聖性という同様の理由からであろう。これは日本の神道のもとになった原始宗教にも内在している性格で、一種の普遍宗教と考えてもいいのだと思う。

長くなったので別の日にマルタ編をアップする。マルタの民宿がすばらしくて勉強するのにすごくいいので久しぶりに机の前で過ごしている。
maltaburrowguesthouse

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rhenin について

中谷礼仁(なかたに のりひと)歴史工学、早稲田大学建築史研究室所属、教授、日本荒れ地学会、日本生活学会、日本建築学会などなど。その正体はResercher of temporal architectural expression.
カテゴリー: "On the Edge Tour 2013", Uncategorized タグ: , , , パーマリンク

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