全集落の紹介2/3 プレートテクトニクス際の旅イラン編- Long Architectural Journey along edge of Plate Tectonics, in Iran-


(引き続き残りの訪問した集落を紹介。解説を加えたら量が増えてしまったので、後日また紹介させていただきます。)

正直、驚嘆の連続であった。一般の傾向として、日本の集落訪問よりはるかに容易に近づける。これはイランの他者への歓待の精神から来るもので、素直に感嘆した。お茶もたくさん飲んだ。しかしあくまでも男性側を通じてであり、ゲストの立場である。国外の男性研究者が集落の女性へ直接コンタクトをとることは生活慣習上、注意した。
*今回紹介した村落の他に他コーカサス地方に属するギラン州の木造建築群がある。これについては別の意味を持つので他のトピックでとりあげさせていただく。

Izadkhast, Fars
*ノアの方舟のように幅の細い丘の上にさらに高層階を大地と同じ材料を用いて煉瓦造としたため、現在では高層化された自然、蟻の巣のような形態をもつ。驚異の形態。崩壊の危険性高。
訪問日:2013年2月28日。
訪問者:深見、佐藤、奥山、中谷
活動:実測、インタビューを行う。

道路を走っていると、眼前に信じがたい物体が飛び込んできたので、ドライバーに慌ててストップを依頼。するとそこが、深見先生が準備した集落の廃墟であった。今にも崩れそうな砂質の丘にさらに日干し煉瓦を積んで高層化していた。


実際崩壊しているし…

日干し煉瓦が自然化して、建物が立つ大地とほとんど一体化しつつあった。この砂上の楼閣について、崩れた一室を実測して、その成立寸法を確認した。

バットレス付きなのわかるかしら。日干し煉瓦がとろけています。

livelihood(生存の環境): 河岸段丘の一部。川と元河道と思われる交易道にはさまれた船のような細長い丘に位置。現在廃墟だが、もとの住人が段丘下の低地に水田を所有。牧草または麦を栽培。牧畜も行う。
buildinghood(構築の環境):四階に達する高層階あり。煉瓦造。地域から算出される土を用いた日干し煉瓦を用いる。床、屋根に木梁の他、アーチ、ドーム構造多く用いた。19世紀には人口1000人に達した。防御が必要なくなった20世紀に丘から南側中腹に移住し、集落を形成。最盛期1200戸、12000人を擁したが、その後も人口が増え続けたため、北側の河岸段丘上に移住(管理人より聞き取り)。50年前に丘とその上の集落群の一部が崩壊。そのままの姿で打ち捨てられており、現在廃墟。

Eslamiyeh, Yazd
*急峻な山脈間に点在するオアシス
訪問日:2013年3月1日。
訪問者:深見、佐藤、奥山、中谷
活動:実測、インタビューを行う。


近づくと、急に山間が険しくなる。

これは氷河期に氷河でも通った跡ではないだろうか。そしてその圧倒的な氷の移動にも耐え残った小さい丘がぽつんとあり、そこを起点に集落が展開したというのが、ここEslamiyehであろう。

その丘はおそらく変成作用をうけており、固いが片岩化している。そのためこの石は建築素材には使われず、集落は堆積土による日干し煉瓦によって構成された。

livelihood(生存の環境): 急峻な山脈間が浸蝕された堆積地。氷河のあととも思う。集落の西側に固い地層の丘が残っている。東側に果樹園が広がる。砂漠の都市Yazdの避暑地として過去住んでいた人が里帰り地と利用してされており、常の住民は老人が多く減少傾向。(実測した家の住人からの聞き取り)
buildinghood(構築の環境):平屋、部分的に2階。日干し、焼成煉瓦造。泥をぬる。中心集落部はアーチ、ドーム構造。付近の丘側の住宅は丘から切り出した切り石を野積み。黒色の石で、片岩質ではがれやすく、風化しつつある。高層階は見当たらない。
その他:中庭住居形式をよく保つ。

Maymand, Kerman
*地層を巧みに利用した横穴居住居コンプレックス。複数階構造。
訪問日:2013年3月3日。
訪問者:深見、佐藤、奥山、中谷
活動:実測、インタビューを行う。


訪問集落中でも強烈な印象を残した集落。すでにbuildinghoodの項に書いているが、火山岩性の地層をくりぬいて横穴住居としている。村全体が山の浸蝕作用によってできたか細い谷間に成立している。グロテスク画の顔に見える。

成立年代は不明だが、人口は50人を切っている。周囲を歩いてみると、この地が鳥葬の風習をそれほど古くない時期まで持っていたことが分かった。山のいただきに石を積んで建てられたダフネがあったからである。村人に聞いたらダフネだという。ダフネとは遺体を安置し鳥に汚れた肉を処理してもらう場所である。これはイスラム流入前のゾロアスター教の風習なのだった。よく見るとダフネは小山の頂上を利用して対になっており、これはYazdでみた著名なダフネである通称・沈黙の塔でも同じであった。

実測を行った。分析は少し経ってから。

livelihood(生存の環境): 火山の終端の浸蝕地の谷間に立地。谷を流れる川を挟んで主に零細な農業、牧畜。飲用水は後背の山の湧水から共有水道に配給。人口は激減している。50人。
buildinghood(構築の環境):穴居。堅固な段丘上部を屋根とし、その地層の下の削りやすい層をうがち穴居とする。段丘部にせり出すように煉瓦で室内を増築。上部歩行可能。大地に近い箇所を家畜室とする。
その他:河岸段丘上に小高い対の山があり、サークル状の石積みあり。ダフネ(鳥葬用の場所)と説明。現時点で行っているかどうかは不明。きわめて古い村と言われている。

Laft, Hormozgan州。
*傾斜した傾動地塊?の岩盤に立地する海沿い、風の塔(バードギル)を持つ集落
訪問日:2013年3月4日
訪問者:深見、佐藤、奥山、中谷
活動:実測、インタビューを行う。


ルドフスキーの『建築家なしの建築』でもとりあげられていたこの集落。緩やかな角度を持つ傾斜する岩盤を基礎として

並列に路地をはさんで三列程度にならんで建てられている。

バードギルは後述するようにほとんど機能していない。ようやく機能している住宅を発見し実測をさせてもらった。


実測中も涼しかったし、バードギルから始まる家の祖形を佐藤先生が考えたりしていた。

livelihood(生存の環境): イラン南部、Qeshim島。本土側に立地。西側に傾いた傾動地塊?上に立地。現在は海水を浄水場で処理して飲料用とする。以前は井戸があった。漁業、製造業、運輸業等を生計とする(インタビューにおいて)
buildinghood(構築の環境):煉瓦造、室内冷却用のバードギルという建築装置を各戸が備えていることで有名。調査した家のは傾いた岩盤面に直接建てられている。バードギルつき室内にバルコニーが付帯した間取りが基本と考えられ、増築によって次第に中庭形式になった可能性がある。
その他:「10年ほど前に町役場(shouraye mahali)の人が住宅調査をしに来たときに、冷房があるのでバードギルが必要ないと伝え、その結果町役場の人が、バードギルを閉じた。バードギルから猫や蛇が住宅内に入ってくることもバードギルが必要ないと伝えた理由だった。(隣の家の人)バードギルは、猫、ネズミ、鳥が入ってこないように閉じている。冷房があるので必要ない。」(奥山聞き取り)
(続く)

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rhenin について

中谷礼仁(なかたに のりひと)歴史工学、アーキオロジスト。早稲田大学建築史研究室所属、教授、千年村プロジェクト、日本生活学会、日本建築学会など。著書に『動く大地、住まいのかたち』、『セヴェラルネス+』など。
カテゴリー: "On the Edge Tour 2013", Uncategorized パーマリンク

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