UttaraKhand 土地のかたち、人の住まい- Long Architectural Journey along edge of Plate Tectonics, in India-


UttaraKhandウッタラカンドとはインド北部の州の一つで、ヒマラヤ山脈の南、ネパールの東側に位置している。ここはユーラシアプレートとインディアンプレートの際である。ヒマラヤはそのぶつかりによって海底が隆起し褶曲した(衝突型造山帯)結果というのは、小学校で習った。
あまりにもすごい話なので、それ以来、自分の頭から切り離してしまっていたが、それを結びつけなければならない。またここも、インドで最も地震の多い地域である(前回の記事の地図参照)。ダージリンでの高地の住まいでの仮説(山の中の岩盤の方向性と住まいとの関係)を念頭に入れながら、さらに再確認を行えればと思った。なお当方、地形や地質はまったくの素人で旅のお供に今までで最も分かりやすかった『カラー版徹底図解 地球のしくみ』新星出版社1400円をつれているに過ぎない。引用する当方作成のグーグルマップ内には地形(地質)等も多く写真で掲載しているようにしているので、どうぞご指摘いただければ幸いである。わからないので地形(地質)と一緒くたに表現しているていたらくである。

今回はJaganの弟子筋で知己でもあったMoulshri 女史に一役買ってもらった。彼女が勤務しているデリー最高峰の建築学校の一つSPA(School of Planning and Architecture )で、同じく彼女も共同経営している若手のデザイン事務所Space MattersにインターンできていたShubhiさんという学生を紹介してもらい、種々ご協力いただくいただくことになった。実測したかったので、これは幸いである。というのもメジャーは複数で計ると全然仕事が早いからである。そういうわけで今回は実際の住宅の実測も行えた。一軒1時間から、最後の方は一軒10分ぐらいでできるようになった。伝統住居には型がある。それを覚えてしまえば、構成が把握しやすいからだ。この型を知っていれば、現代住居のモデュールも比較して判明する。
宿泊先はSatoli villageにあるHimalayan village SORAPANI と言うところで、これも以前Space Mattersが現地リサーチの際に知ったお薦めの場所ということであった。若手官僚の道を途中で投げたサステイナブル志向の44歳の人が取り仕切っていて、村全体をどのように活かすかの中核としてそのゲストハウスを運営しているとのことであった。お湯はソーラーパネルで、充分に温まった熱湯が相当量でるので驚き(朝は冷たいが)。なかなかインデペンデントな考え方の人で感心した。村の人を雇い、今は、土地でとれた麦を使ったパン屋さんを経営するために古民家を改修していた。その現場も見に行ったが、ここが僕の大きな夢の場所だと真正面に言われた。妄想しているだけの人より、実際にやっている人と話をすると気持ちがいい。

今回はやや長文なので、以下の構成で書くことにする。

1. どのような地形(地質)か
2. どのような住まいか
3. 土地のかたちと人の住まいとにどのような関係があるか
4. Livelihoodについて…どのようなところに人は住むか

1. どのような地形(地質)か
まず訪問前にジャガンの家でグーグルマップを見ているとなにやら、すごい地形(地質)によって作られている街を見た。Nainitaliである。


ここ、プレートの際地点のドンピシャで、二つの地形(地質)がぶつかって閉じ込められた湖と、その地形(地質)に従って村ができ、その結果コンタにならう道が褶曲の線そのものをなぞっていると判断するほかなかった。いやいやこれはすごい場所だなあと、宿に行く前に立ち寄ってみたのであった。
現地に行くと、グーグルマップで真上から見た方が、わかりやすい。しかしながら、住居のならびには一つ大きな特徴があって、山に沿ってできた家の並びが徹底的に水平につながっているのである。いくら道はコンタをなぞるとはいえ、ここまで水平なのだろうか。この水平性はそもそも家や道が造られる時の基盤となる地形(地質)にもそれに見合った特徴があるのではないか。

nainital1

nainital2

この思いは、宿泊先から見えるAlmoraを見ても消えない。本当に水平である。かつよく見ると、徹底的な水平性をなぞるかのように未開発の土地(政府の方針で開発が禁止されている地域)を見ると、植生も水平なのである。

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想像は膨らむ。ただ僕は地形(地質)の専門家ではないので、ここに上げるグーグルマップにつけた当方の各日程のトラックデータと写真を確認していただければ幸いである。

21日(short trekking by walk near guest house) 

22日(Jageshwar, Almora by car) 

23日 (one day trekking, Kafta, Mona, Gaaj villages)
この疑問を果たすためにAlmoraの連続断面図に1時間で挑戦してみたのだが、これはまだまとまっていないのでまたの機会に。下の写真はその一枚。アルモラの深い横道世界。

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2. どのような住まいか
21日から23日にかけて、宿泊先のHimalayan Village SORAPANIが所在する周囲の村をトレッキングした。また途中で車を使ってやや遠くの古都Almoraとヒンズー教の聖都Jageshwarを見に行った。Jageshwarに多く建立されている中小規模のヒンズー寺院。その建て方は中世的である。またここの石積みは、特に周囲の環境との親和性をもつ。山が教えた建築の作り方とでもいうか。

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さて各所で簡単な住まいの実測調査をすることができた。
実測調査物件は以下の9件

A廃墟(Satoli village)年代不詳(「相当古い」とのこと)、石積み、平屋↓

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B廃墟(Satoli village)年代不詳(「相当古い」とのこと)、石積み、火事跡あり、2階建て↓

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C住居(Satoli village)15年前建設、自力建設、石積みに泥塗り、2階建て(Gfloorが牛小屋、1stFloorが住居)↓

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D住居(Jageshwar)年代不詳(扉の装飾から見て1世紀ぐらい前かもしれない)、連棟型、石積みに泥塗り、2階建て(Gfloorが牛小屋、1stFloorが住居)、基礎に岩盤が露出している!↓

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E廃墟(Between Jageshwar and Almora)年代不詳(「相当古い」とのこと)、複雑な連棟型、石積みに泥塗り、2階建て、これも岩の上に直接乗っている。その上オーバーハングだ。↓

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F廃墟(Kafta village)年代不詳、石積み、2階建て、これも基礎に岩盤が露出しているような感じ。写真を見て気づいたので今となっては分からない。↓

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G建設中住居(Kafta village)石積み、前部柱、屋根スラブは鉄筋コンクリート製、平屋↓

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H住居(Mona Village)50年ぐらい前に建設後増築、石積み、2階建て↓

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I建設中住居(Gaaj Village)夫が自力増築中、石積み、平屋、石は横の山の岩を切りだしている(下の写真参照)。↓

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以下がそのときに採寸した図面である。(特記なき限り中谷作成)
A廃墟(Satoli village)平面規模は6090mm×5970mm。正方形モデュール。↓

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B廃墟(Satoli village)平面規模は6590mm×6680mm。これも正方形モデュール。↓

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C住居(Satoli village)平面規模は8800mm×4600mm、正方形モデュールの2連に近いが厳密ではない。↓

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D住居(Jageshwar)正方形モデュールが3つ連続していると推測。↓

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E廃墟(Between Jageshwar and Almora)、複雑な構成だが中心部は正方形モデュールの組み合わせでできている。↓

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F廃墟(Kafta village)Shubi作成、平面規模は6800mm×5450mm↓

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G建設中住居(Kafta village)Shubi作成、プロポーショナルにかけていないが平面規模4250mm×8670mmなので、ほぼ正方形を二つ組み合わせたモデュール↓

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H住居(Mona Village)↓

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H住居の平面部分、上図の白いところに嵌まる。Shubi作成、平面規模9880mm×10000mmなのでこれも正方形モデュールを二つ合わせた形である。

 

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I建設中住居(Gaaj Village)Shubhi作成、既存部分(右側)平面規模5550mm×6460mm, 増築(左側)平面規模4400mm×6460mmなので正方形モデュールからは外れている。↓

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3. 土地のかたちと人の住まいとにどのような関係があるか
さて、これらを分析してみるといくつかの傾向がでてきた。
・正方形平面モデュールの石積み…A, B, C, D, E, F
・2階建てはほとんど正方形平面モデュール…A, B, C, D, E, F
・古い建物+露出した岩の上に建っている…D, E,
・新しい建物、最近の増築、DIY建設、平屋は正方形モデュールが崩れている…H, I
・新しい建物でも専門業者(この地では大工が生きている)によるものはモデュールが保たれている可能性があり…G

さらに要約すると
古いものに明確なモデュールがあること。その壁厚と空間の寸法を考えると、かなりの堅牢性があったろうと思われる。また正方形モデュールも均質な荷重分散には効果的であったろう。平屋、新しいものでは、そのモデュールがやや崩れつつある。
大工さんもつくれば、住民も作ること。(おそらくその違いは平屋かそれ以上かになるのではないかと思われる。あと貧乏な村は自分で作っていた可能性もある。)
そして古い住居の中には固い岩盤に直接建っている事例がいくつかあったことである。これらは住まいと地形(地質)との関係性が濃厚であることを示唆していると思われる。
また、増築は正方形平面モデュールで行われていたようで、以下のような連棟型建物には明確な増築線とジョイントのための付加石が見つけられた。

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また一般的に言えば、鉄筋コンクリート構法は従来不可能であった建設場所での建設を容易にする。↓

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4. Livelihoodについて…どのようなところに人は住むか
Livelihoodとは、くらしの手だての関係というような意味。今回遭遇した、アメリカ・メイン州から来たコミュニティ学習プログラムチームのアメリカ人の教師がよく使っていた言葉で覚えた。どのようなところに人は住むかにも関係しているので、今後覚えておこう。
Shubhiと確認しあった基本条件は以下である。
・水が要る…村の場合、湧き水(ごくわずか、村に一つあるかないか)、湧き水からの政府による供給(一般的)、川からの取水(飲み水にはレア)
・太陽が要る…特に午前中に光が当たる場所が好まれる。光が当たらない場所では、冬の場合午後でもフロストが残る。
・建設地が要る…岩だらけでは無理、砂だけでは無理。岩と土との混在の場所がベスト。人は岩を切り出して家を造り、次第に棚畑ができあがる。
・建設素材が要る…適度に耐久性があり加工も可能な石が近傍にあること。
・耕地が要る…棚畑に使う場合、建設地との深い関係がある。

道に面している多くの家の場合その他に
・経済的諸関係を検討する必要がある。車が通ることによる近代的素材の流入が必須…不適当な場所に不適当な構法で建てられる可能性がある。たとえ50m近くに道があっても面していなければセメントはやってこない。
・階級制度を検討する必要がある…遠隔の村の人びとの多くが低い階級のカーストと言われている。つまり遠隔の村はそもそも暮らしにくいのは前提。特に教育上の問題が大きく、子供を持つものは常に引っ越したいと思っている。実は子供の教育は家族の生死に関わる重要問題とも言える。

このような要素のマトリックスの中に、人が生存するセット(Livlihood)は存在するのだろう。
多くのインタビューを行い、ムービーに収録した。Shubhiの英語通訳付きである。
また車のドライバーが、本当によく知っていて(知ったかぶりもほとんどなくと判断した)、その言動の英訳をShubhiに依頼しておいたので届くのが楽しみである。

次のカトマンズは高地の中の盆地である。より多角的な検討を行ってみたいが、少し休もう。
Mr. JAGAN SHAHさん、奥様のRUBYさん、娘さんのJETHIさんとBHAVIYAさん、日本のオッサンを1ヶ月近くも泊めてくれてありがとう。健康的な食事をありがとう。ジェンガとウノをやってくれてありがとう。一緒に旅してくれてありがとう。

最後に、この写真にここの世界のすべてがあるような感じがする。        DSCF3655

他の写真と照合したら、ゲストハウスからはこんな風に劇的に見える場所に位置しているのであった。

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rhenin について

中谷礼仁(なかたに のりひと)歴史工学、アーキオロジスト。早稲田大学建築史研究室所属、教授、千年村プロジェクト、日本生活学会、日本建築学会など。著書に『動く大地、住まいのかたち』、『セヴェラルネス+』など。
カテゴリー: "On the Edge Tour 2013", Uncategorized タグ: , , , , , , , , , , , パーマリンク

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