瓦礫の上の保存論 日本建築学会発行『建築雑誌』2012年4月号の対談に参加しました。


いつまでも気鋭の研究者・青井哲人氏が編集長体制を敷く2012〜『建築雑誌』。その4月号の特集「残されしもの、生かされしもの」で、頴原澄子先生と対談しました。いわば瓦礫の上の保存論です。当方なりの保存の視点も説明しておりますので、ご笑覧いただければ幸いです。ここでの保存論は以前、東京大学のUTPCで開催された建築保存論のときに考えたこと(田中純先生、小澤京子先生ありがとうございました)を、今回の震災に引き寄せて考えました。

文中で紹介した、シチリア・ 1968年のベリーチェ地震後のサレミ市の教会堂の瓦礫の残し方はきわめて重要です。崩壊した教会は復原せずに、残ったパーツを再利用して、最低限の照明や手すり等を付加して広場としてよみがえらせています。確かに昔から教会は町の中心にあり、広場の機能もあったということからすると、これは教会の形見であると同時に、広場としての機能をも維持しています。ジベリーナ市のアースワークのわかりやすさに比べこの繊細な方向性は重要だと思います。実はこのサレミ市の事例を教えてくれたのは、当方の研究室を2007年に卒業した阿部将顕君でした。学生の地味な作業をきちんと紹介できてよかったです。

「〜「保存」という意識がどのように生じ、そして社会がモノを再び位置付け直してゆく様態にはどのようなものがあるかが議論されている。廃墟が日常的なアメニティへと転ずる回路、そして無意識的な残存が将来の社会的承認への架橋たりえる可能性など、重要な指摘がある。」青井哲人

いろいろ参考になる視点があり、また現編集体制ならではの広い視点から無理なく特集に収斂する姿勢もさすがだと思います。今後とも日本建築学会発行の『建築雑誌』をよろしくお願いします。

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rhenin について

中谷礼仁(なかたに のりひと)歴史工学、アーキオロジスト。早稲田大学建築史研究室所属、教授、千年村プロジェクト、日本生活学会、日本建築学会など。著書に『動く大地、住まいのかたち』、『セヴェラルネス+』など。
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  1. ピンバック: 建築における敬意の試考〜シチリア・サレミ計画を対象として〜 | abe2funk

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